自分らしく、演じる

人の上に立つことが苦手。リーダーや代表になりたくない、役職などには就きたくない。中学生の時からずっとそう思っていた。ところが課長を命じられた。周囲は祝福したが、自分はやりたくない。一般社員とは違う机の向きで、大きいイスと机も与えられたが、そこに座りたくない。断れるものなら断りたかった。 性格診断をしても「向いていない」。

「どうしよう」と悩んだが、新任リーダー研修で「リーダーのスタイル」というものを知った。「引っ張るだけがリーダーではない。いろいろなスタイルがある。」と学んだ。自分が描いていた「リーダー像」は、単にいくつかのスタイルの中のひとつにすぎないと知った。尊敬する先輩リーダーの真似をする必要などなく、自分らしいリーダーになればよいと理解した。自分のスタイルは組織を引っ張るのではなく、組織内の調和を取ったり、実務として模範を示したりすることだと考えた。そうすると気が楽になった。強い牽引力が必要となるときは、引っ張るタイプのリーダーの「ものまね」をすればよいという知恵もついた。ただ「ふりをする」「演じる」だけ。 「おひとよし」や「内向的」な人はリーダーには向いていないというわけではなく、自分らしい無理のない「リーダーとしてのスタイル」を創ればいい。その中で「ものまね」を取り入れればいい。

人間の性格は変えられないが、「決まった型」になろうとするのではなく、「あるべき姿」の方を見直せばいい。自分らしい「あるべき姿」を創り、必要に応じて期待される姿を「演じればいい」。以後、自信のなさそうな新任リーダーにはそのことを話したが、そういうやり方もまた、「自分のスタイル」だと思える。

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